見上げれば、青
「水野さんさー…。そろそろ、休憩しなよ」
私に握らせたラムネを食べろと強要する訳でもなく、突然そう言った鳴海くん。
何?って言い返そうとしたけど、鳴海くんの表情を見たら口を開けなくなった。
こちらに向けられている表情は柔らかくて。
さっき見たような、目尻の下がった顔で笑ってる。
鳴海くんは、青空と太陽を背負って笑ってた。
「ずっと一人で、今まで頑張ってきたんでしょ?」
何言ってんだろう、この人って本気で思った。
そして私は、すごく怪訝な顔をして鳴海くんを見ていたに違いない。
実際のところ、この人今日初めて私と話したんだし、今までの私を知ってるはずがない。ので、私が何に苦しんでいるかも知らないはずだ。
「誰にも言えず。一人で。」
なのに、全て見透かしたような目をこちらに向けている。
赤の他人に、初対面で言うような言葉ではないはずだ。本来。
私の何を知っててそんな馬鹿なこと言ってんだろうって。そう思った。
そう表情にも出ていたはず。
良い気分ではなかったし、知らない人にそんなこと、言われたくなかったから。
だけど、柔らかい笑顔を浮かべながら鳴海くんは言うのだ。
休憩しろ、って。
「――もういいよ、水野さん。頑張りすぎたら人間だってエンストするんだから」
たぶんその言葉を聞いて、私は本当に何かが切れてしまったんだと思う。
人の心にずけずけ入ってくる、無神経な人だと聞いていたけど。
何かが私の琴線に触れてしまって
張り詰めていた糸が、ぷっつりと切られてしまった。