勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。
僕と彩さんの住む家はそれなりに新しく、それなりに広い二階建ての一軒家でバリアフリー構造だ。ちなみにこの家は僕が記憶を失う前にキャッシュで買ったものだと父さんが教えてくれた。
正直、僕はその話にちょっと疑問を抱き、驚いている。なぜ、彼女もいない独身男が一軒家を景気よく買ったのか・・・と。
それはさておき、この家の間取りは一階にリビングダイニングとキッチンとお風呂とトイレ。それと応接の間と僕の部屋があり、小さな洋室が一つある。その小さな洋室は僕が執筆の際に使っている大事な仕事部屋だ。
そして、2階の居住スペースは僕のホームケア担当の彩さんが使っている。別に住み込む必要はないのだけれど、彩さんからの強い要望があり、僕は困りながらも彩さんの住み込みの許可をした。
僕は彩さんの住居スペースである2階を見たことがない。いや、きっと一度くらいはあるのだろうけれど、記憶を失ってからは彩さんの居住スペースである2階を見たことがない。
2階の間取りとしたら恐らく三部屋くらいだろか?家の外から見るとそんな感じだ。
僕は左足を失っているのでわざわざ用のない2階にあくせくして上がろうとは思わない。それ以前に上がることをなぜか住み込みである彩さんに禁じられている。
『2階は私のお部屋なんですから男性は立ち入り禁止です!』と・・・。
そんなことを言われると見たくなるのが人の性だと僕は思う。まぁ、覗かないけれど・・・。それに何より、彩さんとの約束を僕は破りたくはないので上がらない。彩さんに嫌われたくもないし・・・。
だから僕はいつも2階へと続く階段をぼんやりと見つめては通り過ぎる日々を繰り返している。
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