勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。
僕一人の昼下がりは本当に静かだ。
今日の朝早くから彩さんは出掛けている。どこに行くかは聞かなかった。聞けるほど僕と彩さんの関係は密ではないし、なんとなく聞くことは憚れた。何よりも僕は彩さんの口から『彼氏とデートなんです』なんて甘い言葉が出てくるの恐れた。だから僕は行き先を聞きたくても聞けれなかった。
僕は弱虫だ・・・。
僕はぼんやりと小さな仕事部屋の小さな窓から小さな外の風景を見つめた。
そこにはまるで一枚の絵画のような穏やかな冬の風景が広がっていた。
僕の中の世界は今、平和だ。
何の争いもなく静かで穏やかだ。
けれど、どこか虚無だ・・・。
それはきっと僕の世界に今、彩さんがいないから・・・。
もしも今、僕の世界に彩さんがいたら僕の世界は完璧だ。
そんなことを僕は心の中で呟いて小さな溜め息を吐き出した。
どうして僕は左足を失い、記憶をも失ってしまったのだろう?
世界はいつだって残酷で事故は予期できず怖い・・・。
本当に僕はそう思う。
けれど、それでも世界は美しくて素晴らしくて面白い・・・。
僕はそうも思う。
世界はいつも矛盾だらけだ。