勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。

「要さん」
「うん?」
彩さんの不意の呼び掛けに僕は意識的に微笑んで車椅子を押してくれている彩さんをゆっくりと振り返った。
振り返った先に見えた彩さんの顔の表情は今までに見たことがないくらいに無表情で意識的に作られた僕の微笑みはバースデーケーキに立てられた細いカラー蝋燭の火のように呆気なく掻き消されてしまった。
彩さん・・・どうしたんだろう?
心の中でそんなことを思い、呟く。
それと同時に彩さんの口が動き、いつもより活気のない声が発せられた。
「要さんは人は死んだらどうなると思いますか?」
「・・・え?」
僕は問われている意味がわからず随分と間抜けな声を発してしまった。
人は死んだらどうなるの・・・か?
それについては僕も最近、よく考えていることだった。
人は死んだらどうなるのだろうか・・・と。
けれど、その答えはいつも出てこない。昨日も一昨日もその前の前の日も同じように人は死んだらどうなるのだろうかと考えた。
けれど、その答えは結局、今日も出てきてはいない。
だからこそ気になる。
人は死んだらどうなるのだろうか・・・と。
「僕も・・・僕も最近、同じことを考えていました。人は死んだらどうなるんだろうって・・・」
僕はそう答えて緩く微笑んだ。それにつられてか彩さんもニコリとしてくれる。
やっぱり彩さんは笑っている顔の方がいい。改めて僕はそう思った。
「最近、毎日その答えを見つけようとしているのですが見つかりません。もしも、僕に前世の記憶があったのなら面白い小説が書けるのではないかと思うけれど、それもまた傲慢だとも思っています」
僕はそう言って苦く微笑み、小さな溜め息を吐き出した。
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