勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。
細やかな幸せほど、尊いものはないと僕は思う。
そう思えるようになったのは恐らく、僕自身が事故に遭ったお陰だ。
僕は左足を膝上から失い、記憶をも失った。
けれど、それに見合う『何か』を僕は今、得ているのだと思うし、得ていると感じている。
例えば普通に自分の足で歩くこと。
これはもう僕には叶わない。先ほども述べたように僕は不慮の事故に遭い、左足を膝上から失った。失った足は生えては来ない。僕はトカゲじゃないから。・・・トカゲも足は再生できなかったっけ?
再生できるのは尻尾だけか・・・。
・・・まあ、それは置いといて・・・だ。
自分の足で歩けることは幸せなのだと僕は足を失ってから気づいた。
僕にはもう左足はないけれど、自分の足で歩けることは幸せなことなのだと気づくことができた。
気づけれたことは幸福なことだ。僕にはもう左足はないけれど・・・。
できることならもっと早くに気づきたかったな。
僕は心の中で呟いた。
そして、僕は本来ならあるはずの膝から下の足に触れようとそこに手を伸ばした。けれど、そこには何もない。
嗚呼、寂しいな・・・。
不意にそんなことを思うと苦い笑みが滲み出た。