toxic
大学の講義後、私はまっすぐ家に帰った。
こんなに早い時間に家に帰るなんて久しぶり。
もうあの人は家に帰っているのだろうか。
インターホンを鳴らすと、その男はだるそうに扉を開けてきた。
「なんだお前か」
「まあ、一応お世話なったし。お礼しないと、みたいな。」
ふーん、と興味なさそうに返事をしながら男は部屋に戻ろうとした。
「ん」
私はずいっと、男に袋を突き出した。
中にはスルメやチー鱈のおつまみセット。
片付けてるとき、テーブルにビール缶あったし、お酒好きなのかなと思ってのチョイス。
「おお、お前結構気がきくやつだったんだな」
ちょっと見直したわーといいながら笑われた。
笑えば意外にかわいいのね。
「てかお前鍵あったの?」
「大家さんに言って、鍵作ってもらった」
「よかったな。今日は野宿にならなくて」
もう無くすなよ笑いながら、クイッと手招きされる。
「お前さすがに未成年じゃねえだろ?もう1つお礼に晩酌に付き合えよ」
「お前じゃない、アンナって言うの。水瀬アンナ。てか、私もあなたの名前知らない」
「・・・乱場」