ただ、守りたい命だったから
『会いたくない!家から出てって!二度と私に顔見せないで。慈季にも会わせないわ。次に会えるのは将来、慈季が会いたがった時だけよ。慰謝料も養育費もなにもいらないから、離婚して。』

次の日。

慈季をきぃちゃんに任せ、私と櫂琉と薺は病院の中庭にいた。

「薺くんがさ、父親になろうとすっごい努力してるの見て、やっと安心してたとこだったんだよね。でも、自分の息子が殺されかけたのに、あれはないわ。見損なったよ。もう任せられない。」

「悪かった!許してほしいなんて、思わない!でも、潤と慈季から離れたくないんだ。」

土下座してくる薺を、冷やかな目で見てる私達キョウダイ。

何にも心が動かされない。

『ねぇ、私が誰かに殴られて倒れても、それにキレた櫂琉をひどいと思うのよね?』

「思わないっ!」

泣いてる顔を上げ、拳をぎゅっと握りしめてる薺。

『だって、慈季を庇う私をひどい言い方だと言ったのは、あなたよ?私の時も一緒でしょ?守ってもらえない所か、責められるのよ?そんな父親や旦那は私達にはいらないわ。』

「潤っ、潤っ!」

私の足元にすがってくる薺。

もう、どんなことを言われてもされても、疑いの目で見てしまう。

それは私も櫂琉もとても疲れるわ。

信用されてない薺にとってもね。

救いは、慈季がまだ小さかったこと。

記憶にも残らない時期でよかった。
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