世界にひとつのどこにもない物語
ここで自分が嫌だと言えば、先ほどの出来事が起こることは間違いないだろう。

「家の前で待っていてくれると言うなら、ついて行っても構いませんけど…」

そう言ったまやに、
「それでええわ」

狼谷は首を縦に振ってうなずいてくれた。

「ところで…この野次馬は何や?」

いつの間にか周りにできていた人だかりに気づいたと言うように、狼谷が聞いてきた。

(全部おのれのせいや!)

まやは大きな声で狼谷に叫びたくなった。

「すみません、お騒がせしました」

営業用の微笑みを顔に浮かべると、まやは狼谷の手を引いてその場から立ち去った。

(それにしても、何ちゅー1日や…)

狼谷からのプロポーズに始まった1日に、まやの頭の中はキャパオーバー寸前だった。
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