そのイケメン、オタクですから!
進学校だから部活を真剣にしてる人は少なくて、定員割れしそうな部もちらほら。
バスケ部もその一つだ。

「人数足りなくてさ、ちょっと悠斗試合出ねぇ?」
そんな声がかかる。「出てくれたら選挙入れるから」なんて言われて、先輩にそれはまずいでしょ、と耳打ちする。

「今の一言はなしな。賄賂とか言われたら困るし。でも、まぁ、俺も久々にバスケしたくなってきた」
急に好奇心丸出しの少年みたいな目をして、ブレザーを脱ぐ及川先輩。

ポンと投げられた上着を私は慌てて拾い上げた。

長袖シャツの腕を捲って、バスケットボールを手にする。
軽くしゃがんで軽やかなドリブルを始めたと思ったら、左にフェイントをかけて一気に右から抜き去った。

ボールが手にくっついてるんじゃないかと思うようなドリブルでそのまま2人抜いて3ポイントシュート。

入るわけない……と思った。

だけどボールはリングに当たってそのまま吸い込まれていって、女子マネージャーたちが歓声を上げた。

「当てないつもりだったんだけど。俺も腕が鈍ったな。試合は選挙終わってからな」
ボールを後輩に投げて私から上着を受け取る。

意外だった。
ただのオタクだと思ってたのにバスケも上手いなんて。
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