俺様副社長のとろ甘な業務命令
「昨日、大丈夫だった?」
「え? あ、ああ、うん、まぁ」
「かなり酔ってたからさ、心配してたんだよね。ちゃんと帰れた?」
「あー、うん、何とか」
何?
私、帰ったことになってるの?
「ちょっと、覚えてないんでしょー?」
「へっ?」
「ゆずがやばそうだから、副社長がタクシー乗せに連れてってくれたんだよ?」
「えっ」
何だ、そういうことになってるんだ……。
「あー、そ、そうだったんだ! いやぁ、あんまり、覚えてなくてさ……あはは」
「あははじゃないよ。だから言ったじゃん、日本酒なんかガバガバ飲んじゃってさ〜」
「すみません……以後、気を付けます」
「よろしい。しっかし歓迎会してもらって、酔った部下のお世話とか、副社長かわいそ過ぎだから。ほら、コーヒーでも入れて謝ってきな!」
「う、うん」
どうやら、私は酔っ払ったのち、副社長がタクシーまで連れていったということになっているらしい。
変な冷や汗が出かかったものの、余計なことを口走る前に、昨晩の表向きな自分の行方を知ることができてホッと安堵する。
引きつる笑顔のまま美香子から副社長のデスクをチラ見すると、すでにパソコンに向かって仕事を始めている姿が見えた。