俺様副社長のとろ甘な業務命令
昨日のことをはっきりさせたい。
背後にまだ気配を感じながら、そんな思いでいっぱいになっていた。
シュガーのスティックに手を伸ばしながら意を決して口を開く。
「昨日のこと、本当に思い出せなくて……ちゃんと教えてもらえませんか」
コーヒーに入れた砂糖をマドラーでぐるぐると溶かしながら答えを待つ。
返事がないことに間が持たず、さらにコーヒーフレッシュを手に取る。
ブラックに白い波紋が広がっていくのを見つめていると、微かにフッと笑われるのを感じた。
「ちゃんとって、どんなことを知りたいわけ?」
「それは……」
わざとだ。
わざと、聞き辛いような返しをされてる。
「だから、昨日本当に――」
「おはようございまーす」
出来上がったコーヒーを振り返り差し出したタイミングで、同僚たちがわらわらと給湯室へと入ってきてしまった。
微妙な空気を漂わせている私たちに視線が集まる。
「どうぞ……」
「これはお前が飲め。俺はブラックしか飲まない」
「え……」
「あ、あと、モデル起用の候補出し、もうリストできてるのか?」
「あ、はい。もう少しで仕上がります」
「じゃあ、出来上がり次第見せて」
いきなり仕事の話をぶっ込んで、副社長は給湯室を出ていってしまう。
あっ、ちょっと……。
出かかったため息を呑み込んで、再びコーヒーのボタンを押し直した。