俺様副社長のとろ甘な業務命令



あー、今日も疲れた……。


エレベーターを出て社員証を手にゲートを通過する。

十九時を回っているけど、エントランスにはまだまだ多くの人の姿がある。


終業時間前に依頼していたコスメデザインが上がってきて、そのチェックと資料をまとめていたら二時間ほど残業をする羽目になった。

今日は定時で帰りたかったけど、そうも言ってられない。


しかし、今日は朝から散々だった。

今朝催促されたモデル起用の候補出しをして提出すると、もっと絞れとダメ出しを受け、急いで作り直せば、午後から副社長は一人店舗の顔出しで外出。

慌てまくったのに、結果間に合わずチェックをしてもらえなかった。


何だか、昨日から振り回されてばっかり。

結局、例の一件もうやむやのままだし、今日は仕事にも全然集中できなかった。


昨日の今頃に戻れたら、あんな醜態は絶対回避するのに、なんて思う。

酔って自己管理が出来なかった自分がそもそも悪いわけだけど、完全に弱味を握られた感がある。


副社長がやってきた社内は、急に華やかな雰囲気になった。

副社長なんて肩書きの極上のイケメンが女子率の高い職場に入ってくれば、多少なりともみんな浮かれた気分にはなると思う。

学生の頃の人気の男子にキャッキャする、あの感じにどこか似たものがある。


仕事もできるし、華やかで爽やかだし、私だって普通に職場で初めて会ったのなら、多分素敵だなって当たり前に思ったはずだ。

普通に会っていれば、の話だけど。


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