俺様副社長のとろ甘な業務命令
「んーー! 美味しい!」
たっぷりの刻み玉ネギに、分厚いチャーシュー。
縮れた太麺に絡む、魚介ベースのとんこつスープ。
豪快に麺を啜って、思わず満面の笑みを浮かべてしまった。
夕飯をご馳走してくれると言われ、訪れたのは私の独り暮らしをする最寄り駅すぐ近くにあるラーメン店。
雑誌にもよく載る人気店で、休日なんかは店前まで列ができていることもある。
颯ちゃんが下車する駅から二つほど先の駅まで来させちゃったけど、一度一緒に食べたいと思っていたからいい機会だと思った。
「しっかし、ラーメンなんかで良かったのかよ。色気ねーなー」
「颯ちゃんとご飯食べるのに色気とかいらないでしょー?」
「まぁ、それもそうか」
「それに、今日は帰ってカップラーメン食べようと思ってたから、本格ラーメンになってラッキーだよ。やっぱり飲んだあとはラーメンだよね」
「え? 飲んだって」
「あぁ、昨日ね、歓迎会があってさ。それで今日もちょっと二日酔い気味だったんだ」
「歓迎会、この時期にか」
「そう。何かニューヨークにいた副社長がうちの課にくることになってさ、それで」
「ふ〜ん、副社長ね……。そんなお偉いさんが来たんじゃ、何か大変そうだな、色々と」
「そうなんだよ! 超大変。部長にさ、今やってる新商品のプロジェクト、組んでやれとか言われちゃってさ……」
「あ、もしかして、今日見かけたかも。昼頃、エントランスのとこ一緒にいなかったか?」
「あー……いたかも」
例のダメ出しをされた候補案について話しながら、外出する副社長を一階まで見送ったあの時だ。
颯ちゃん、目撃してたんだ。
ぺこぺこ頭下げてたし、また駄目なとこ見られちゃったな……。