俺様副社長のとろ甘な業務命令
こっちの動揺を知ってか知らずか、副社長は手を離すと、その綺麗な顔に柔らかな微笑を浮かべる。
落ち着かない心臓が余計に跳ね上がって音を立てていく。
かと思えば、急にニヤリと意味深に口角を上げた。
「ちょっと触れただけで、なに緊張してんだよ」
「えっ、べっ、別に緊張してなんかっ」
「一晩一緒に過ごした仲だろ、何を今更」
とんでもないことをサラリと言った副社長は、クッと意地悪く笑う。
言われたことを意識したようにカァっと顔が上気して、頭の中が一気に真っ白になった。
「失礼しますっ」
ほとんど逃げるようにして車から出ていた。
助手席のガラス窓越しにこっちを見ている副社長にぺこりと頭を下げ、小走りでマンションの中へと駆けていく。
な、なっ、何なの!?
ちょっと触れただけって、そのちょっとが心臓に悪いんですけど!
直接は言えない心の声が爆発する。
背を向けても上がった心拍がすぐには戻らず、振り返ることはできなかった。