俺様副社長のとろ甘な業務命令



翌日は朝から行われる最終調整会議で直で青山の開発部へ訪れることになっていた。


早目にと思って出向いた開発部のオフィスにはすでに副社長の姿があり、自然としゃんと背筋が伸びる。

今回の新商品プロジェクトの担当になっている山本さんと書類を手に話し込んでいた。


「おはようございます」

「あ、斎原さん、おはようございます」

「昨日はご迷惑をお掛けして、すみませんでした」


昨晩のことを一番に謝罪すると、山本さんは私のすぐ目の前までやってきて顔を寄せる。

手にしていた書類で口元を隠した。


「こっちこそ、ごめんなさいね。部長、大騒ぎで、びっくりしたでしょ?」

「いえ。私がご迷惑を掛けたので、当然です」

「そんなことないわよ。斎原さん、いつもよくやってくれてるもの」


「あんまり気にしなくていいからね」と、優しい言葉が掛けてくれる山本さん。


いつも穏やかで落ち着いている山本さんは、開発部の優秀なベテラン女子社員。

噂では、今の山城部長が部長に昇格した時、山本さんも部長候補に挙がっていたといつだか耳に挟んだことがある。

家庭のある山本さんが、その座を山城部長に譲ったとか譲らなかったとか……。


「じゃ、先に会議室へどうぞ。もうすぐ山城部長も出社すると思いますので」


去って行く山本さんに頭を下げながら、昨日の不機嫌を隠し切れない山城部長を思い出す。


自分のミスが元凶なわけだけど、顔を合わせるのは気が重すぎる。


< 53 / 179 >

この作品をシェア

pagetop