俺様副社長のとろ甘な業務命令
長い廊下の奥に見える、ガラス抜きされたドアの向こうがリビングダイニングだと予想される。
曖昧な記憶ではあるけど、前回慌てて飛び出したベッドルームは、多分その手前にあるドアだったような気がする。
このレベルの高級マンションなんて、私の感覚ではファミリータイプだ。
独り暮らしには絶対持て余してしまうサイズだと思ってしまうのは、私が庶民だからだろうか。
それにしても、こんな早朝から呼び出されて、一体何をやらされるのか。
まさか、家政婦扱いで掃除でもしろとか言われるんじゃ……。
「おはよう、ございます……」
突き当たりのドアを開けると、想像を遥かに超えた空間が広がり、思わず足を止められる。
高すぎる天井に、手前にはアイランドキッチン。
奥のリビングは全面のガラス窓で、寝室と同じように開放的な眺望が開けていた。
どこを見ても広い、豪華、が必須フレーズと言っても過言ではない。
その広いリビングの手前のダイニングで、副社長は新聞を広げて座っていた。
紙面から目を上げ、突っ立つ私をチラリと見る。
一言「おはよう」と言い、特にそれ以上のリアクションはなく再び紙面へと目を落とした。