俺様副社長のとろ甘な業務命令


「その調子なら、起こされてそのまま来たんだよな? 早く座れ、食べるぞ」

「え、これ、私の、ですか?」

「あと誰がいるんだよ」

「それは……」

「それともあれか、『朝は食べないんです〜』ってやつか。不健康だな」

「違います! いただきます」


勢い良く返事した私を見て、箸を手にした副社長は満足気に微笑する。


「これ……まさか副社長が」

「まさかって何だよ」

「だって、お手伝いさんでもいるのかと」

「今は必要ないから頼んでいない」


てことは……やっぱり、そういう生活してたってことなんだよね。


「こんなの、趣味みたいなもんだ」

「趣味、ですか……」

「今度はもっと早くに来て、お前が作ってみるか」

「えっ、私がですか!?」

「俺よりできるだろ、料理くらい」


しれっと当たり前のことのように言われ、即答できず口ごもる。


独り暮らし歴はもう五年ほどになるけど、料理は正直得意じゃない。


作れるものは簡単なものばかりで、これは自信があるっていうメニューはパッと思い付くものがなかったりする。

こんな朝食は確実に作れない。

もしいきなり作れと言われたら、間違いなく大恥をかいてしまう。


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