俺様副社長のとろ甘な業務命令


「ここ……」


そこは、横浜にある製品製造をしている自社工場。

入社してすぐの頃、一度だけ研修期間に訪れたことがあった。


自社工場は一般の工場見学も積極的に行っていて、その内容がお得感満載でオシャレだとメディアにもちょくちょく取り上げられている。


駐車した車から降り、広大な工場に掲げられた巨大な社名を見上げる。


「どうして、工場に」

「今日から稼働するからだ」

「えっ、新商品のですか? 予定では来週頭からのはずですよね?」

「予定より早まった」

「そうだったんですか?!」


工場に向かって歩いていく副社長の後を追いかけながら、急に胸がドキドキしてくるのを感じていた。


新商品の開発プロジェクトに参加してみないかと言われてから、好きな仕事がもっと楽しくなった。


まだない新しいコスメを、この世に生み出す仕事に携われること。

いつからか抱いていた夢がやっと叶う。


その場所に立てたことは、私にとって特別なことだった。


企画したものが少しずつ形になっていくことに日々心躍らせながら、生み出したコスメたちとご対面できる日を心待ちにしてきた。


いよいよ、その瞬間がやってくる。


そう思うとワクワクする気持ちが溢れ出しそうだった。

< 83 / 179 >

この作品をシェア

pagetop