俺様副社長のとろ甘な業務命令
「高宮副社長、お待ちしてました!」
到着した私たちに気付いた工場長が、わざわざ外まで出向いて挨拶にやってくる。
ベテランの域に入る杉本工場長は、歳の頃は私の父と同じくらいに見える。
小走りで駆けてくると丁寧に頭を下げた。
「初日の忙しい日に失礼します」
挨拶を交わす副社長の後につき、「お疲れ様です」と頭を下げる。
「いえ、遠いところをわざわざ足を運んでもらって」
「こちら、広報の斎原です。今回の新商品プロジェクトを一緒にやらせてもらってます」
「斎原です。よろしくお願いします」
「君が斎原さんか。牧瀬部長から話は聞いているよ。熱心な部下が気合い入れて頑張ってくれてるって。休日までご苦労様」
皺の刻まれた顔にくしゃりと笑みを浮かべて、工場長は嬉しい言葉を掛けてくれる。
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
「初日で慌ただしくしているかもしれないですけど、ゆっくり見て行ってください。さっ、どうぞどうぞ」