俺様副社長のとろ甘な業務命令
製造のスケジュールなど新商品のことについて工場長から少し話を聞いてから、稼働し始めている工場内を見学させてもらうことになった。
ぜひ現場に入って見てくださいと工場長は言ってくれたけど、作業の邪魔にならないようにと一般見学コースから見せてもらうことにし、副社長と二人、ガラス張りの見学スペースから工場内を見下ろしていた。
「いよいよだな」
「はい。何か……感慨深いです」
隣に立つ副社長を見上げると、ガラス越し遠くの製造ラインを真剣な眼差しで見つめていた。
「もうすぐ手に取れると思うと、ワクワクします」
「本当に、好きなんだな」
いつの間にかガラスの向こうを見ていた目が私の顔を見つめていて、急な視線にドキリとしてしまう。
目が合うと副社長は微かに笑みを浮かべた。
「自分が手掛けたものが形になるのは、この仕事の最大の喜びだって俺も思う」
「……?」
「斎原は、人一倍そうかもしれないな」
足りないところがありすぎて迷惑ばかり掛けているけど、好きという情熱を持ってこの仕事をしていること。
それを認めてもらえたような言葉に、胸の奥がグッとくる。
再び工場内に目を向けた副社長の顔を見上げ、小さく息を吸い込んだ。