俺様副社長のとろ甘な業務命令
事務所へと顔を出し挨拶を済ませると、駐車している車へと再び乗り込んだ。
シートベルトを締めた副社長はナビの操作を始める。
「悪かったな、休日に連れ出して」
「いえ……」
さっきの頭ポンポンの効力が凄すぎて、副社長の顔がまともに見れない。
画面に触れる骨ばった指を見ているだけで、また気持ちが落ち着きなくそわそわしてしまう。
「ここまで来たついでに、横浜の店舗に行こうと思う」
「あ、はい。私も一緒に行きます」
「この後の予定は大丈夫なのか」
「はい。元々今日、何の予定も無かったので」
本当だったら、今頃の時間までだらだらと家でごろついている予定だった。
朝っぱらから呼び出されて休日出勤を命じられ、最悪だなんて思っていたけど、思いも寄らない場所で嬉しい現場に立ち会うことができた。
自分の誕生日に、待ち望んでいる商品が生まれる瞬間を目の当たりにできたこと。
今の私にとっては、何よりの誕生日プレゼントに思えていた。