俺様副社長のとろ甘な業務命令


「お疲れ様。近くまで来たから様子を見に来た。少し覗かせてもらう」

「あ、はい。ご指導等あれば、よろしくお願いいたします」


副社長と店長のやり取りに気付いた他のスタッフたちも、接客中にも関わらず急に落ち着かない様子を見せ始める。

副社長は一人、店舗内を見て回り出した。



「お疲れ様です。広報宣伝部の斎原と申します。すみません、急に来てしまい」


視察を始めた副社長を不安そうに見つめる店長に頭を下げる。

店長は「いえ!」と慌てて笑顔を作った。

突然の訪問でやっぱりかなり動揺しているようだ。


「本当に突然来店されるんですね、副社長」

小声になって、店長は尋ねてくる。


「他の店舗から聞いていたんです。副社長が突然来店して、驚いたって」

「そうでしたか……」

「でも、熱心な方ですね。上層部の方が、わざわざ店舗周りするなんて今までないですから」



確かに時間を見つけては、店舗への顔出しに出掛けて行くことが今まで何度かあった。


もしかしたら、私の知らない時間外や今日みたいな休日にも、こうして現場に行っているのかもしれない。


「では、何かありましたら声掛けてください」

店長はそう言い残すと副社長の元へと行ってしまった。


私自身、店舗に訪れるのは久しぶりだった。

大好きなコスメに囲まれているこの空間にいると、自然と心が弾んでくる。

商品を手に取る楽しそうなお客さんの顔。

悩んでいるお客さんにアドバイスするスタッフの姿。

それを見ているだけで、何だか力が湧いてくる。


馴染みの商品を眺めながら、副社長が販売スタッフと話しているのが目に入る。

どんな話をしているのか聞いてみようとスタッフの背後に立った、その時だった。


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