俺様副社長のとろ甘な業務命令



お客様の注目が集まらないうちにと、副社長と店舗を出たのはそのすぐ直後だった。


あの後、ただならぬ空気を察して店長もやってきてしまったけど、彼女が怒られてしまわぬようよくお願いし、その場を丸く収めた。


副社長も目の前にいたから、私たちが帰った後に怒られてなければいいけど……。



「あの時と同じだったな。お前が俺にやったのと」


車を出してから、副社長は思い出したかのようにクスッと笑う。


「やめてくださいよ。まぁ……私もあれ思い出しましたけど」

「彼女が俺の代わりにやり返したってことだな」

「何ですか、それ」


すぐに拭いてもらったけど、やっぱり綺麗には消えなかったルージュの赤。

隠すようにしてコートのボタンを閉めておいたけど、帰ったら早めにクリーニングに出さないと。


「ていうか、彼女がテンパったのも、副社長のせいなんじゃないですか?」

「俺は何も言ってない。少しアドバイスをしただけだ」



だから、それが原因なんだってば……。

やっぱり無自覚か。



「まぁ、私は人のこと言えた立場じゃないですけど」

「それもそうだな」


副社長はまたクッと笑う。

改めて笑われてちょっとムッときたけど、敢えてそこには触れず黙って受け流した。


< 92 / 179 >

この作品をシェア

pagetop