俺様副社長のとろ甘な業務命令
お客様の注目が集まらないうちにと、副社長と店舗を出たのはそのすぐ直後だった。
あの後、ただならぬ空気を察して店長もやってきてしまったけど、彼女が怒られてしまわぬようよくお願いし、その場を丸く収めた。
副社長も目の前にいたから、私たちが帰った後に怒られてなければいいけど……。
「あの時と同じだったな。お前が俺にやったのと」
車を出してから、副社長は思い出したかのようにクスッと笑う。
「やめてくださいよ。まぁ……私もあれ思い出しましたけど」
「彼女が俺の代わりにやり返したってことだな」
「何ですか、それ」
すぐに拭いてもらったけど、やっぱり綺麗には消えなかったルージュの赤。
隠すようにしてコートのボタンを閉めておいたけど、帰ったら早めにクリーニングに出さないと。
「ていうか、彼女がテンパったのも、副社長のせいなんじゃないですか?」
「俺は何も言ってない。少しアドバイスをしただけだ」
だから、それが原因なんだってば……。
やっぱり無自覚か。
「まぁ、私は人のこと言えた立場じゃないですけど」
「それもそうだな」
副社長はまたクッと笑う。
改めて笑われてちょっとムッときたけど、敢えてそこには触れず黙って受け流した。