夫の真実
夕方、買い物をして、帰宅すると、テーブルに要さんの書き置きがあった。
『美保へ、
急にオーストラリアに出張になりました。
携帯が見当たらなくて、連絡できずにすまない。土曜日には、帰国予定。留守を頼みます。
要』
今夜、話をしたかったのに、肩透かしをくらったようだ。これから4日間、長いなあ。
その上、携帯で連絡が取れないのだから、帰国を待つしかない。
会社用の携帯にまで、掛けたくはないから。
そのあと、要さんの帰国まで、私は、悶々として過ごすことになる。
信じていると言う自分、もしかしたらと思う自分、両側から引っ張られ、心が壊れそうなところまで、自分を追い込んでしまっていた。
私は、家から一歩も出ず、要さんと一美さんのことで頭も心も一杯にして、だんだん何も考えられなくなっていた。
こんなに、弱い自分ではなかったはずなのに、恋は、人を弱くするのか。
一緒に過ごしてきた時間が短いために、要さんと言う人間を100%信じるだけの絆が、まだ築けていないから。
お見合いから今日(こんにち)まで、まだ1年も経っていない。私よりずっと大人の要さん。
私では、子ども過ぎて、物足りなかったのだろうな。
2日後、私は、グリーンシティホテルに花を活けに行くことをすっかり忘れてしまっていた。
佐伯の叔母が、私の携帯に何回も連絡してくれたが、充電切れの携帯は反応せず、仕事は代わりの人を急遽手配してくれていた。