私の彼氏は超肉食系
理由は分かっている。

準主役クラスに抜擢された女優『ベティー』が絡むシーンの撮影が開始された途端、彼が『ベティー』を罵倒し始める。

アクセントもイントネーションも関心する程完璧な日本語なのに、『これだから外タレは』を連発し始めた。

慌てて芸能事務所の社長が調べたところ、過去に彼の映画のスタッフロールに載った外国人俳優が全く居ないことが分かった。

さらに調べを進めていくと彼が監督した作品に出演した新人女優や外国人俳優の大半が彼のイジメによって泣く泣く辞めさせられていた。

つまり、彼の映画のこれまでのヒットは新人俳優や外国人俳優を使うという博打をやらずに映画の質を一定以上に保つことで成しえてきたのであろう。

ある意味正論かもしれない。

だがこれに困惑したのはプロデューサー。

そもそも、私をプロデュースして映画を撮影するに至った動機はタイ人と日本人のハーフ女優『ベティー』のプロデュースを世間に不審に思われずやりとげるため。

つまり、女優『ベティー』を外すことは主演である私を外すこと以上に有り得ないこと。

当然、プロデューサーと私は彼女を庇うことになった。

女優『ベティー』が絡むシーンは助監督に任せるというプロデューサーの鶴の一声により、生贄を失った監督は、その矛先を私に向けてきた。

主演女優とはいえ、登場シーンの少ない私を外すことなど容易いと考えているみたい。

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