私の彼氏は超肉食系
「なんか世間の評価とは随分と違うひとなんだな。」

さっきまで嫉妬の固まりだった和重が突然、目が覚めたかのように落ち着いた様子で話し出す。

「世間の評価ってどういうの?」

急に成り上がればイロイロ言われるよね。

「ああ冷酷非道の乗っ取り屋とか。玉の輿に乗ったラッキーボーイ。男女を問わず誑し込むオカマ野郎。とも言われているな。」

あまりにも本人を見ずに言っているとしか思えないわね。

「酷い。あのおじさまは、真剣に『れいな』お姉さまのことを考えてらっしゃったよね。凄く安心できる方なのに、そんな酷いことを言う人がいるなんて信じられない。」

会ったばかりの、あきえちゃんが憤っていた。

「和重。少し言いすぎよ。」

「俺? 俺じゃねえよ。世間の奴らが・・・。いや、俺もここに来るまではそう思っていたかもしれない。この会場に来て皆に慕われている姿を見て、なんか違うと思ったさ。実際に会うと全然違う人物なんだよな。驚いたよ。全く。」

和重が手の平を返したことを言い出した。

ここにもひとり誑しの犠牲者がいた。

「先輩は冷酷でも非道でもないよ。いつも自分のことは後回しで周囲の人のことばかり考えてくれるんだ。」

「そうね。でもオカマ野郎かは分からないけど『天然の誑し』だけは正解よね。」

「おい。『オカマ野郎』を否定してやれよ。」

「「「「そうだよ!」」」」

うわっ。

このテーブルの人間全員、誑されてしまったみたいね。

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