私の彼氏は超肉食系
「明日からなら、いつでも受け入れてくださるそうです。」

私が受け入れ先の個室料金を告げると彼の母親は頷く。

「わかったわ。ありがとう御世話になるわね。あんな子じゃなくて貴女が私の子供だったら良かったのに・・・。」

涙をポロポロと零しながら、私の手を握ってくる。

これは演技かな。

遠くから見れば演技は完璧だったのだが、近くで見ると黒目の部分が全く動いていない。

お世辞を言うだけで演技をしてしまうとは、これが世にいう『女優の性』なのかも。

この演技でお詫びに伺うテレビ局のプロデューサーたちを泣き落すのかもしれない。


リンリンリン・リンリンリン。


可愛らしい着信音だ。

こんなことでも清純派を演出しているのか。

「はい。『一条ゆり』でございます。あっ・・・・・・・・はい、この度はご迷惑をお掛けして大変申し訳ありま・・・あっ・・ちょ・・・。」

相手は誰なのか分からないが、今回の一件に関することということだけは分かる。

それも相手が一方的に話して電話を切られたようである。

「あのう・・・。」

私は、ため息をつき項垂れる彼女に声をかける。

「今回の大河ドラマの監督さんよ。次回作にも私が出演する約束の代わりにあの子を出して頂いたのだけれど・・・私の次回作の出演も保留にして欲しいそうよ。あの子の所為で私の仕事がどれだけ減ってしまうというの。私は何もしてないっていうのに!」

そう言った背中に哀愁が漂っている。

こちらは演技では無さそうである。
< 26 / 307 >

この作品をシェア

pagetop