私の彼氏は超肉食系
「止めろ!」「ヤメテー!!」

精神科の先生が大声を出して裕也に飛び掛ったようで、私の首から裕也の手首が外れる。

ヒューヒューヒュー・・げほっ、げほっ・・・げほげほげほ・・・ヒュー・・・ヒューヒューヒュー・・・フー・・・ゲホッ・・・。

身体を折りたたみ咳き込むと次第に肺に空気が入り始め、さらに咳き込む。

近くにあったベッドに身体を預け、それを繰り返していると次第に意識が戻ってくる。

タイミング良く精神科の先生と『一条ゆり』が入ってきたようで間一髪、命が助かったようだ。

私はそのままベッドに仰向けになり呼吸を整える。

あーまだクラクラする。

完全に元に戻るには当分時間がかかりそうなので視線だけを周囲に向ける。

良く知っている精神科医の遠藤先生が裕也を取り押さえていた。

母の主治医でもあり、裕也に欲望を抑える注射の処方をしてくれた先生だ。

「ねえ! 大丈夫?」

母親の『一条ゆり』もショックだったろうに気丈にも私の心配をしてくれる。

目の前で息子が殺人を犯そうとしたのだ。

錯乱してもおかしくない状況だ。

「・・・だ・・ひ・・しょーふ・・れす。」

まだ声帯が戻っていないようで掠れた声で答える。

「ちょっと、まってください・・・もう、少しで元に戻りますから・・・。」

私は目の前で所在無げに揺れている彼女の手を引っ張り握り締める。

< 55 / 307 >

この作品をシェア

pagetop