私の彼氏は超肉食系
裕也は猿轡を噛ませて拘束衣が被せられ、両手・両足を縛られて転がされている。

「私の責任だ。すまない。」

直前の裕也の様子と話を聞いた遠藤先生が目の前で頭を下げている。

「そんなことありません。本当に助けて頂いてありがとうございました。」

「昨日の夜、この部屋で彼とカウンセリングを行なっていたときに・・・付けてあったテレビを見て黙り込んでしまったときに気付くべきだった。」

幾ら精神科医と言えど、患者の心が読めるわけじゃない。

しかも昨日入院したばかりなのだ。

性格さえも碌に把握していなかったに違いない。

その彼がいきなり凶行に及ぶなんて想像がつかないだろう。



裕也が俳優という仕事に対して真摯に向かい合ってきたことを知っている私自身が真っ先に気付くべきだったのかもしれない。

精神科医になるつもりは無いが、患者が思うであろうことを想像できないなんて医者としてダメだろう。

こんなに近くにいたというのに、私は彼の肉食系男子としての側面しか見ていなかったのである。

精神的ショックが真綿で首を絞めるようにじわじわと効いてくる。

泣きたくても甘えられる人間が傍にいないのがツライ。



「誠に・誠に・誠に申し訳ありません!」

落ち込んだ気分が一瞬で吹っ飛び、思わず目が点になる。

今度は『一条ゆり』が土下座をして、床に頭を擦り付けている。

「私がイラナイことをしたばかりに大変な目に合わせてしまって。本当に申し訳ありませんでした。」

私が芸能界デビューしたのが切っ掛けといえば切っ掛けか。
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