魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



“僕は”、を強調するアサヒを前にして、苦々しげな顔をするシロウさんに、時々「あれ」と思うことがある。


多少なりともアサヒを思ってくれているのは見ていて分かるけど、その表現がなんとも下手なのだ、この人は。



それをアサヒ本人に見せる気はないのかもしれないけど、確かに私の前では怒るほどに露わにしていた。


そんな人が、アサヒのことを苦手に感じているらしい。


と言うより、弱点に近いかもしれない。


アサヒに言葉で責められるときほど、顔を歪めることはないと断言できる程度には。



今も頬を引きつらせてはため息をついて降参している。


いや、お手上げ状態と言えばいいのだろうか。


つまり、アサヒに物申すことを諦めているのだ。



というのも……




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