魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



普段のこの時間なら、一人で読書に勤しんでいたりする。


けど今日はシュウも用事など無いということで、当たり前のように二人で過ごす。


というのも、シュウは家にいる間は滅多に私の側から離れることがない。


というより、この部屋から出ることがない。


彼が外で何をしているかは聞いたことがないけど、たとえ聞いたところで答えないだろうことは分かっているため、沈黙。




と、いうわけで。


いつもは取らない、午前のおやつにデザートを作って私なりに持て成しているのだ。


席に着いてほっと一息。


……とはいかず。



「ど、どうですか…?」


膝に乗せた手で服をぎゅっと掴んでシワを作る。


恐る恐る、といったふうに問いかけた私に、ゆったりとした優雅な所作でクリームと共にパン生地を口に運んだその人はふわりと微笑んだ。


「美味しいよ」


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