【完】『けったいなひとびと』

奇策


他方で。

さやかは駿の扱いで、どうしたらいいのか考え続けていた。

ふと応接のセットの脇にあった、一冊の新聞に目が留まる。

そこには、

「買収」

といった文字が見えた。

「…そうだ、買っちゃえばいいんだ」

小さく漏らした。

こうなるとさやかは行動が早く、経理部を呼んだ。

「今、私のフリーで動かせるお金っていくらあるの?」

「今のところ予備費で三千万か四千万はあるかと思いますが」

「それで、ちょっと買収の手付金にしようと思うんだけど…」

「どこの企業を押さえるのかですが?」

「お酒の小売りメーカーなんだけどね」

「…それはどうかと。稟議が要ると思われます」

「うーん、ダメならいい。じゃあ私がポケットマネーでそこ買うから。ならいいでしょ?」

さやかは自腹を切る覚悟もあったらしい。



< 113 / 128 >

この作品をシェア

pagetop