【完】『けったいなひとびと』

こんな調子で。

さやかと駿の──むろん会社には内密である──新たな展開は始まった、といっていい。

無論。

社内では従前どおり、

「秀島社長」

「伊福部くん」

という呼び方で使い分け、これがプライベートになると、

「さやか」

「ダァ」

と呼ぶ…といった案配式である。

駿はどちらかというと客観的な面があるので呼び分けは苦でもなかったようだが、さやかは時折口調がきつくなると「ダァ」が出そうになるので、

「なるだけ冷静にならなきゃね」

と、二人きりのときなどは反省をすることもあった。

ただ。

さやかの雰囲気が少し変わったのだけは、舞やさとみにはすぐ判明したようで、

「社長、もしかして恋してます?」

などと言われると、

「まぁねー、相手は内緒だけど」

などと切り返すぐらいのことはさやかもする。



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