桜ノ蕾
「なんかさぁ」
しばらくして秀が呟いた。
私は閉じていた目を開けて隣を見る。
秀はぼんやりとお墓を眺めていた。
「傀儡(くぐつ)にはお似合いの墓かもな」
「傀儡?」
聞き返すと秀はこちらをチラリと見て、また前を向いた。
「義長のこと。こいつは当主になった後陶晴賢の言いなりだったんだってさ。だからそう呼ばれてるらしい」
「さっきいった人?」
「そ、さしづめ操り人形ってとこだろ」
「操り人形……」
秀から目を離してお墓を見る。
操り人形か。
当主って偉いはずなのにこんな小さくて寂しい所に眠っている人…
何だかさきほどの狂い咲きの桜を見たときと同じ切なさが込み上げ、胸が締め付けられた。