桜ノ蕾


「まぁ、ちょっとは楽になった……かな」


まだ不安なことだらけだけど、ちゃんと私の話を信じてくれる人がいる。
それだけでさっきまでの孤独感が少しだけ和らいだ気がした。


「取り敢えずお主の話は信じよう。私が呼んだかは分からんが、返す方法を探してみよう」

「本当?! 本当に探してくれるの?!」


彼はコクリと頷いた。


真っ暗だった道に光が指した。
まだ帰ることが出来るかもしれないんだ。


「見つかるまでここに留まっていればいいだろう。先程の娘に話を通しておく」

「あ、ありがとうございます!!」


私は額が床にくっつくほど頭を下げてお礼を言い続けた。

何て親切な人なんだろう。
さっきまでのデリカシーのない人なんて思っててごめんなさい。


「住まわしてくれるからには私何でもするわ!」

「何でも?」

「勿論。掃除でも洗濯でもお皿洗いでも!」


それくらいなら私にも出来るはず。


私の言葉に彼はしばらく考え込んでからニヤリと不敵に笑った。


「何でも、と申したな?」


腹黒さを感じる笑みに身の危険を感じる。
さっきまでの嬉しさが波のように引いていく。


「は、はい……」

「それに偽りはないな?」


な、何なのよ!


いっそう笑みを深める彼に、私は後ずさりした。

「では……」



そう言って彼は私の腕をグイッと引っ張った。

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