桜ノ蕾


「昨日ここには誰も来ないって言ってたのは嘘なんじゃないの? 実は私が来てないときは百合さんが来てたんじゃない?」



刺のある言葉が次々と出てくる。
駄目だと思うが私の口は勝手に言葉を紡いでいく。



「百合さんが近づいて来てもそのままだし。案外まんざらでもないんじゃない? イチョウの事もハッキリと断らないし、本当は百合さんと見に行きたいとか思ってるの?」


殿は何も答えない。
ただ私が喋るたびに掴む手の力が増すだけ。



そんな彼の態度に涙が込み上げてくる。




何とか言いなさいよ。





何か1つでもいいから反論してよ。






「私なんて追いかけずに百合さんと一緒に居たらいいでしょ?」


それを聞いた瞬間彼の眉がピクリと動いた。


「ライは私が百合と一緒にいてもいいのか?」


腕が痛いぐらい掴まれた。
それと同じくらい胸がぎゅっと締め付けられる。
固く目を閉じて言葉を吐き出した。


「別に私がどうこう言う資格なんてないでしょ? 私は貴方のこと何とも思ってないんだもの」


沈黙が流れる。
腕を掴んでいた手がはなされた。



「そうか……」



ぽつりと彼が呟いた。

目を開けてゆっくり目線を上げる。



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