桜ノ蕾
小夜ちゃんが夕飯の支度に向かったので私はもう一度林へ行くことにした。
何だか無償に殿の顔が見たくなった。
「別に深い意味はないのよ。ただよく分からないけど見たいだけ。そうよ、毎日見てたから今日1度も見ないのが変な感じがするからだけなのよ!」
なんて誰に対して言っているのか自分でも分からない言い訳を呟きながら恐る恐る林へと入っていく。
「おぉ、ライではないか」
後ろから声がして慌てて振り返るとそこには殿が微笑んで私を見ていた。
不意打ちでいきなり現れるのは反則だ。
驚きと違う意味で胸がドキドキしている。
少し会うのが遅れただけでこれなんて私重症なんじゃないだろうか。
赤くなった顔を俯いて隠しながら私は本気で自分が心配になった。
「ど、どうしたの? こんな時間に来るなんて珍しいじゃない」
あぁ、言い方が刺々しい。
テンパって正直何を言ったらいいか分からなくなっている。
「今日は少し出ていてな。遅くなってすまん」
「別に待ってないわよ。あんたなんか」
私はどこのツンデレ女子だ!!
何でこんな可愛くないこと言っちゃうのよっ。
「そうか」
でも殿は笑って私の頭を撫でてくれたのでホッとした。
少なくとも今の私の発言で彼が気分を害した様子はないようだ。
「手を出して目を閉じてくれないか?」
「は?」
いきなりの言葉に私は口を開けたまま彼を凝視した。