小さな村の大きな話
「そういえば、この間実家にりんを連れて行ったんだって??」
「正確には兄の家に、ね。
両親はちょっと、悪い意味でクセがあるから」
「そうか。家族に紹介ってことは、結婚でもすんのか??」
「っ!?はぁ!?!?何を突然!!」
動揺して車がぐらりと揺れる。
「前見ろ!!前を!!」
「うわぁ、ごめんっ!!」
「殺す気か??」
「錦が変なこと言うからだろ!?」
しっかり立て直して運転を再開する。
「別に変でもなんでもないだろ??
高瀬なんかは結婚してるし」
「高瀬は、別だよ!!
してないやつのほうが多いじゃないか!!」
「俺は同期だと高瀬くらいしか知らない」
「逆になんで高瀬のこと知ってるのさ」
「寮で同室だったからな」
「そういえば、子供の頃から村に住んでんだよね??何で寮に??」
「お前には関係ないだろ。
俺が言いたいのは、別に俺達は結婚してもおかしくない年齢だ、と言ってる」
「りんちゃんはまだ高校生だよ!?」
「だから、どうなのか疑問に思って聞いてみたんだ」
まぁ、正直大した理由で連れて行った訳じゃない。
まぁ、僕の家族に慣れてほしいっていうのが1番の理由だ。
婚約者と結婚する気はサラサラないと遠回しにでも周知しておきたかった、のかな。
「……あまり気にしないでくれ、参考までに聞いてみただけだから」
「参考ってなんだよ」
「いや、高校生って法的にはもう結婚できるんだな、と。ふと思って。
樹もそろそろ…」
「え、樹ちゃん彼氏いたの!?!?」
「あ"??」
「怖い怖い」
「見合いになるだろうな。咲座家が探してきた相手と」
「いいの!?」
「樹が特に相手を選んでないからな…。
両親は恋愛結婚だったけど」
「そうじゃなくて!!錦が!!」
「俺が??」
「そこんとこ、どう思ってんの!?」
「…そこんとこって…」
「見合いって!!
…たいして知りもしないような男に!!持ってかれちゃうかもしれないんだよ!?」
すると、別に。と小さな声が聞こえた。
と、同時にグシャッと飲んでいたコーヒーのカップが潰れた。
…結構気にしてるじゃん…。
