小さな村の大きな話
3 雨降って地固まる
呼び出された所に行くと咲座さんが1人待っていた。



「朝のバス、楽しそうで何よりですわ」


「えっと、その…」



……つまり、見られた…と。
あぁ、終わったな、私の学校生活。



「あなたのそういうおどおどとした態度、気に入りませんわ」


「ご、ごめんなさい」


「青柳君に何を吹き込んだか知らないけど今後、彼との会話は控えてくださる??」


「え、でも…」


「でも、なんですの??」



向こうから勝手に話しかけてくる…
なんて、言えない…



「すみません…」


「…私は謝罪を求めたのではありませんわ。その程度の日本語も理解できなくて??」


「えっと」


「まぁ、仕方ないですわね。学生の身分で家族でもない男性と同棲してらっしゃるような汚い女。同じ言語が伝わると思う方が間違いでしたわ」


「なんで、それを…??」


「どうやら水だけじゃ足りなかったようですわね。
言葉でだめなら身体でわからせるしかないですわよね」



手が上がった…平手打ちが来る…

パァァァン


…痛くない??

ゆっくり目を開けると咲座さんの手を掴んでいる女の子がいた。

青いネクタイをしてるから、同じ学年だ…



「あんた、何やってんの??」


「あなたに関係ありません」  


「今日のところは見逃してあげるけど、どうする??」



咲座さんはキッと睨みつけると手を振り払った。

私の方に来て思いっきり腕をつかむと耳元でこそっと



「覚えておくことね」



と呟いて私を突き飛ばした。



「キャッ」


「…大丈夫??」


「あ、ありがとうございました」


「あたし、檜山樹。あんたは??」


「ほ、本田りんです…」



差し出された手に捕まって起き上がろうとしたら手に痛みが走った。


「いたっ!」


「黎華に掴まれたとこか。
あーあ、痣になってんじゃん」



よく見るとピンクのダボダボのセーターにピアス。
首には指輪が2つ鎖でぶら下がっている。


…不良!?!?



「あ、えっと…えっと、すみません!!
ありがとうございました」


「ちょっ、あんまり急に動くと
…って、ぅわぁっ!!」



檜山さんまで巻き込んで、コケてしまった…。
多分その反動だろう…
あぁ、心臓が嫌な感じだ。



「ううっ…はっ」



ドクンッ!!!



「ちょ、大丈夫??」


「だいじょ…っつ!!」



痛い…苦しい…
発作だ…。




「…心臓…??薬は??」



そうだ、薬……
あれ、ポケットの中にない!!!



「いっ!!はぁはぁっ…っつ!!」


「落ち着いて、ゆっくり息を吸って」



背中をゆっくり撫でられる。

だめだ…全然落ち着かない!!




「チアノーゼ…まずいね。
ちょっと我慢しな」



私は檜山さんに抱えられて駐輪場につれて来られてバイクの前で降ろされた。

ヘルメットを被せられ、バイクに載せられた。



「しんどいと思うけどしばらく我慢して、救急車呼ぶよりこっちの方が早いから」



檜山さんは、ネクタイを解いて私と結んだ



私の記憶はここまでだ。




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