小さな村の大きな話


ピピピ…ピピピ

夜勤が開けて、やっと一息つけたと思ったら院内PHSが鳴り響いた。



「もしもし壱原です」


『先生の患者さん、意識不明で運ばれてきました。
処置室までお願いします』


「すぐ向かいます、患者は??」


『本田りんさんです』



りんちゃん!?!?



「わかりました。点滴の用意と、モニターお願いします」



走って向かうと処置室の前には随分と着崩しているけどりんちゃんと同じ制服を着た女生徒が立っていた。


なんで先生じゃないのか不思議に思ったけど今はそんなこと気に留めてる場合じゃない。



「壱原先生!!」


「モニター、酸素マスクもありがとね。
よかった、心停止はしてないね」


「発作止めの注射持ってきて」


「わかりました」


注射をしようと思って腕をまくってみたら強く握ったような痣があった…。

なんだ、これ…


とりあえずの処置は済ませた。



「やっと落ち着いたね、しばらくは様子見かな。
君、悪いけど病室まで運んでくれる??」


「わかりました!!」


「よろしく、僕もすぐ行くよ」



処置室の片付けをしていると長谷さんが来た。



「先生、代わりますよ。
夜勤明けでしょう??少し休んでください」


「いや、大丈夫。明日休みだし。
そういえば、さっき処置室の前にいた子って誰です??」


「あぁ、樹ちゃんですか??
りんちゃんと同じクラスで、ここまで運んでくれたんですよ。
急な発作だったらしく始業前もあって、先生や救急車呼ぶより直接来たほうが早かったからって。バイクで」


「バイクで!?!?」


「受付までおぶってきてくれたのも彼女です。あの子、体力だけはあるから。
今は多分りんちゃんの病室に」


「え…??」



りんちゃんの学校の事、何か知ってるかもしれない!!



「ちょっと僕、りんちゃんの病室行ってくる!!」

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