癒し恋~優しく包まれて~
事の始まりは岩田くんへの見合い話からだ。頼まれた時も思ったけど、まだ結婚を急ぐ年齢ではない。それなのになぜ見合い話が出るのか不思議だった。

岩田くんは鼻をかいてから、気まずそうに話す。


「実は、父は総合病院を経営していて、そこの院長なんだけど」

「ええっ! 病院? 岩田くんの家、病院なの?」

「家は普通で病院は別にあるよ。でね……」


私の驚きに苦笑して、お見合い話が出た経緯の話を続ける。

医者にならなければ、医学部にも行かず、医療から離れた道を選んだ岩田くんは病院を継ぐつもりは一切ないし、その旨を親にも話していたし、了解もしてもらっていたという。

それなのに突然見合い話が出たのは、隣の市にある総合病院との合併の話が出たからで、その病院の娘と見合いをしろということらしい。

医療のことは分からなくても経営者にはなれるということらしいが、経営者にもなりたくないし、見合いもしたくはない。

意思を伝えて断ったが、経営者にならなくてもいいから見合いをして、先方の娘と結婚して欲しいと言い出した。

そこまで言うには理由があるはず。その理由を尋ねた。
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