癒し恋~優しく包まれて~
弟も話を聞いてはいるが、ケーキを黙々と食べていて、食べ終わると私の近くに来て、小声で話し掛けてきた。


「姉ちゃん、あれ、持ってきた?」


あれがなにかすぐに分かったので「あとでね」と言うと、弟はガッツポーズをする。


「俺、勉強するからごゆっくり。姉ちゃん、あとでね!」

「うん、がんばってね」


皿を片付けて戻っていく弟に手を軽く振った。今月はセンター試験があるから、追い込みでお正月も勉強ばかりで大変そうだ。でも、学生も大変だけど、社会人はもっと大変。

父は俊也さんに会社のことをいろいろ聞いていた。


「初めて聞いたけど、いい職場に勤めているみたいだし、入江さんもいるから安心だな」

「あ、うん。全然話していなくて、ごめんね」


父は私がどんなところでどんなふうに働いているのか全く知らない。会社名しか教えていなかったからだ。

夏に帰ったときに「ちゃんとやってるか」と聞かれ、「うん」と答えただけだった。何も話さない娘に父はそれ以上聞くことはなかったけど、寂しかったのかもしれない。
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