癒し恋~優しく包まれて~
食事のあと、今日は金曜日だから、もしかして部屋に泊まるのかと熱い夜なんかも期待していたけど、それも無駄な期待に終わった。


「ごめん。なんか悪いこと聞いちゃったみたいだね」

「あ、いえ。すみません……」


涙腺が緩んでいる私の目からはまた涙がこぼれ落ちてしまった。

もう帰ろう。これ以上、ここにいては入江さんに迷惑を掛けてしまう。


「すみません、私帰ります」

「あ、ちょっと待って」

「はい?」

「このあと予定がないなら、俺に付き合ってくれない? 31階にあるバーに行くつもりで来たんだけど、三上さんも一緒に行かない?」


入江さんと一緒にバーに行く?

なんで私を誘うのだろう?


「でも、あの、誰かと行く予定じゃないんですか?」

「いや、一人だけど。そこのバーに友だちが働いていて、たまにふらっと行くんだよ。だから、三上さんも行こうよ。気晴らしに飲もう」

「気晴らしに?」

「そうそう」


半ば強引ではあったけど、私は自分の足でしっかりと歩いて、バーに入った。

中に入ると下の階のレストランとほぼ同じ夜景が見えた。
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