癒し恋~優しく包まれて~
話すつもりはなかったけど、嫌な思いを吐き出したかった。誰かにこの惨めな気持ちを分かって欲しかった。

こんな話を聞かされても迷惑かもしれないけど、入江さんなら聞いてくれると思った。


「それはまた……大変だったね」

「11年も私は何してたんだろうと思うと、なんだか疲れてしまって……」


また涙が滲んできた。自分の気持ちを思い出せば思い出すたびに心が痛む。本当に疲れた。

涙がこぼれ落ちないように唇を噛む。

ふわっ……

えっ、なに?

なんで?


頭の上にそっと手を置かれたと思ったら、撫でられた。撫でたのは入江さん。

唖然とする私に目を細めて、また撫でる。


「我慢しなくていいよ。傷ついた時は泣く。疲れたときは休む。大事なことだよ。それと、11年間の想いは無駄なものじゃない。三上さんにとって大切な宝物になるんじゃないかな」


入江さんの優しい言葉は私の心の中にストンと入ってきた。

自分の存在を認めてもらえたような感じがした。片想いが無駄なものではないと言われて、少し救われた気分になる。


「ありがとう……ございま……す」


入江さんの優しさに涙がこぼれた。
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