空色(全242話)

『あーもう、最近ハズレばっか!』

藤原が仕切るのに慣れた頃、美香はそう言って大きく息を吐いた。

私達、店の女の子は客に当たり外れをつける。
デブやハゲ、キモいおっさん。
皆ハズレ。

それに対して若い人や、中年でもルックスの良い人は、アタリになる。

まぁ、8:2で大半がハズレだけどね。

『どうせ売るならオヤジより若い方がいいじゃん? アユもそう思わない?』

美香は私の顔を覗き込んで言う。

その瞬間だった。
「きゃーッ」と女の子達の騒ぐ声が聞こえたのは。

私達は顔を上げ、声のする方へ急ぐ。

お客様用の待合室に入ると、そこには1人の若い男の人が立っていた。

『こんばんわぁ。 当店のご利用は初めてでしたか?』

BabyDollで売上No.1の奈美は、その男の腕を抱き、甘えた声を出した。

皆考えは同じ。
客は若い方がいい。
少しでもカッコイイ方がいい。

ここでアピールする事に必死になる気持ちも理解できた。

『すみません、俺……』

『システムの説明ですね! 当店では……』

逃がすまいと必死なのだろう。

奈美は男の意見など聞かぬふりで説明を始める。

『戻ろアユ。 どうせ奈美が持ってくよ、あの客』

そう。
奈美には敵わない。

それに、自分から客を増やすなんて馬鹿な真似、したくない。

美香と2人で人だかりの前を素通りする。

しかし、男は私の腕に手を伸ばした。

突然の事に戸惑いながら掴まれた腕を見る。

『こんばんわ。 君を指名していいかな?』

腕から肩へ。
肩から顔へ……

視線は徐々に上へいく。

『君の名前は?』

知らなかった。
こんな綺麗な男(ヒト)が世の中にいるなんて……

『……アユ』

こんな汚い場所に来るなんて……
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