空色(全242話)
まるで自分が、神になったかのような口ぶりで話す藤原。
そんな、奴の怒鳴り声は閉店まで続いた。
数名の黒服と藤原。
それ以外の従業員はホールから排除し、客も入店禁止になった。
一体、中村という男が何をしたというの?
どうせ大した事じゃないんでしょ?
少し仕事をミスしたとか、そんなもんでしょ?
そこまでしなきゃ、気がすまないの?
『お疲れ様。 送りますよ』
閉店から遅れること10分。
店での仕事を終えた幸成が、個室待機していた私を呼びにきた。
『ありがとう』
あんな怒鳴り声を聞いてしまったからか。
幸成に近付くのが恐い。
藤原に怪しまれないかと不安で、情けなくも声が震える。
『今日は素直なんすね』
フッと笑う幸成。
どうして平気でいられるの?
貴方のしてる事がバレたら、あんなんじゃ済まないのよ?
もしかしたら信吾くんより酷く、命だって奪われるかも知れない。
それを解ってるの?
『恐いですか? 藤原さんが』
私の心を見透かしたように幸成はそう言って笑う。
バレないつもりでいるの?
バレないわけないのに。
『もうやめようよ。 幸成なら、絶対にいい人ができるから……』
小心者だと笑われてもいい。
罵られたっていい。
もうこんな危ない事は嫌だよ。
『ねぇ幸成……?』
応えを求めるよう顔を上げた私の目に、幸成の顔が映る。
見下すように私を見て、薄紅の舌をべーと出す。
『やめないね。 藤原さんがああしてる以上、アユは俺から逃げられないんだから』