空色(全242話)

そんな事、聞く方が間違ってる。
好きで、あんな仕事するわけないでしょ?

嫌なんだよ。
本当に。

涙が出るくらい……


『幸成や、奈美に聞いたでしょ? お店の事。 辞めたくても辞められないって事も』

脆(モロ)く、とても弱い。
恋を知って、私はさらに弱くなった。

強く言い切ってしまえばいいの。
「私の選んだ道だ」と。

でも……

『本当は……好きな人としか嫌だよ』

私はそれほど、強くないから。

『ごめん。 意地悪な質問だった』

十和の腕に包まれて、泣く事しか出来ない、弱い人間。

この温もりを知ってしまったから、もう立てないの。

BabyDollを辞められたら、どんなにいいか、
想えば想うほど、悲しくて涙が止まらない。

『ねぇアユ。 俺を誘った時も、仕事だから仕方ないと思ったの?』

もう意地悪しないで。
こうして、十和に会いにきた事で、全てわかってるんでしょう?

『ねぇ…… これも、意地悪かな』

駄目だ。
逆らえない。

静かに首を振って、また十和の胸にしがみつく。

止まらない。
増えて、溢(アフ)れて、漏(モ)れる。

十和への思いが全て……
外に出る。

『奈美と十和の間に何かあったんだって思ったら…… 悔しくて堪らなかった』

頭が真っ白で、怒りと悲しみが、自分を支配した。

『十和は私のものなのにって…… 奈美が憎かった』

あんなに独占欲が強いなんて、自分でも知らなかったの。

だから、どうしていいかわからなくて、十和に酷い事を……

『十和を失いたくなくて、繋ぎ止めたくて…… あんな事』

もう後戻りは出来ない。
もうごまかせない。

私は、もう知ってしまったから。

『もう来ないでなんて、あんなの、ただの強がりなの……』

十和への気持ちを……
< 175 / 243 >

この作品をシェア

pagetop