空色(全242話)

大きな手と小さな手。
指を互いに交差しながら、固く結ぶ。

『愛を結ぶって、こういう事かな』

そんな光景に、ポツリと呟いてみる。

大嫌いだった自分の名が、少しだけ好きになる瞬間。
十和といて、そんな時を幾度(イクド)も感じてきた。

『アユの両親は駄目だったかも知れないけどさ。 俺は結ぶよ、何度でも』

真剣な目。
私の姿をとらえ、決して反らそうとしない。

『愛結が好きだよ』

……ばーか。
クサすぎて、笑えない。

ドラマか漫画かっての。

『恥ずかしー』

十和のせいで、涙が止まんないよ。

ポロポロ、ポロポロ……
本当に止まんない。

『泣くなっての!』

クシャクシャっと頭を撫でる十和は、なんだか照れ臭そうに笑ってた。

そして、もう一度囁(ササヤ)いてみる。

『愛結を、愛してる』

極上の愛を……

涙が止まらなくって、
恥ずかしくって、

もう、笑うしかなかった。

ごめんね?
素直じゃない私は、口に出せないけれど、私も十和と同じ気持ちでいるよ。

【十和を愛してる】










『じゃあ…… 行くね?』

夕方になって私は渋々、十和の部屋を出る。

本当は休みたかったけど、急に休むと藤原の機嫌を損(ソコ)ねるかも知れないし。

この間の幸成の事もあるしね。

とにかく、これ以上、波風たてたくないんだ。

『行かせたくないけど。 頑張ってね』

だから、そんな悲しそうな顔しないで?
そんな顔見たら、逃げ出したくなる。

店に帰りたくなくなるよ。

『十和。 少し頭下げて』

私の指示を不思議そうに受け入れ、十和は腰を曲げ屈(カガ)む。

それと同時、唇をぶつけるように、一瞬だけのキスをした。

『告白の答え』

『は?』

馬鹿。
わかってよ。

「愛してる」の返事だよ……
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