空色(全242話)

『あー、参った参った』

駐車場に車を置きにいった幸成は、戻ると同時、そう言って笑った。

『美香に何したのよ』

そんな奴の前に手を伸ばし、引き止める。

『何もしてませんけど? 逆に俺の方が平手打ちされたんすけどね』

何もしていないのに、叩かれるわけないでしょう?
どうせ、美香にも私みたく迫ったんじゃないの?

『謝るまで口きかないみたいだしね。 幸成の事だから、相当酷いことしたんでしょ』

『酷い事って、例えば?』

『例えば……あっ!!』

油断した。
幸成のやつ、凄い力。

私の手、捩り上げて、
身動き出来ない!!

『例えば、こういう事ですか?』

……キスされる!?

グッと目と閉じ、歯を食いしばる。
何度かの経験を得て、無意識に備(ソナ)えるようになってしまった。

うん。
どれもこれも幸成のせいだ。

しかし、身構えた私に対し幸成は、耳元に軽くキスをして、信じられない言葉を口にした。

『奈美と十和さんの事。 誤解させるような事言って、すみませんでした』

……謝罪の言葉。

【謝るまで口きかないから】

まさか美香。
私の為に……?

『何か言ってくれませんか?』

『あ、うん。 びっくりして』

『許すんすか? 許さないんすか?』

何こいつ。
何で赤くなってんの?

もしかして、人に謝罪するなんて初めて?
そんで、恥ずかしがってんの?

『アユに許してもらわないと、また美香ちゃんに叩かれるんすよ』

ってか、こいつ尻に敷かれてる。
完全に美香の言いなりじゃん。

『許すよ? 今さらだし』

ははっ。
可笑しくて笑えてくる。
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