空色(全242話)
父親に捨てられた私。
最初から父親などいない十和。
よく似た境遇に少し安心した自分がいた。
「仲間がいた」
そう思ってしまったのかも知れない。
『あの、さ。 空はいつ見に行くの?』
私のその質問に十和は目を丸くする。
『それ同情?』
しかしすぐにいつもの不敵な笑みを作った。
同情?
同情、なのかも知れない。
もしかしたら仲間意識かも。
『別に…… あんた悪い人じゃないし』
とりあえず害は無さそう。
そう思ったんだ。
『わかんないよ? 実は悪い人かも』
『んじゃ行かないよ』
意味解んない。
自分から誘ってきたくせに。
『嘘だってば。 アユの都合のいい時でいいよ?』
先程と一変して無邪気に笑う十和。
その笑顔がカンに障る。
でも、何故かホッとする。
人間は嫌い。
男なんて大嫌い。
でも十和は嫌いじゃない。
好きでもないけど、嫌いでもない。
限りなくゼロに近い存在。
『あんたって男っぽくないよね』
ビールをグイッと飲み干した後の十和にそう言うと、十和はニッと笑った。
『何? ニヤニヤして』
『ん? 今、ちょっと笑ったっしょ? 通ったかいがあったってもんだね』
あれ?
私、笑ってた?
『って、いつも笑ってるし』
『いつものは営業スマイルって言うの。 俺は素の笑顔が見たいよ』
違う。
笑いたくて笑ったんじゃない。
あんたが馬鹿みたいに笑うから、
阿呆みたいに、子供みたいに笑うから。
『馬鹿みたい。 あんたも美香も』
遠慮無しに人の心ん中、ずかずか入って、掻き乱して。
『美香って?』
言いたい放題、やりたい放題で。
『親友だよ、私の』
でも、
最後には必ず笑顔をくれる。
そういう所は嫌いじゃないよ。